続ウアウトラ デ ヒメネス
Posted at 07/04/21 PermaLink»
26日早朝5時メキシコシティー再び到着。
チケットを代理店に取りに行き、所用を済ませた後
睡眠を貪る。
夢を見る。
友達と会った夢だ。
俺が何かを話すと友達は泣き出した。
とても泣くとは思えない友達が涙を流しながら
俺に何を言った。
どうやら、何かを間違った俺に泣いてるようだ。
友達を悲しませたことが
凄い悲しかった。
最後に「そんな話聞きたくねーよ」
っと云われた。
夢の中で俺は友達に何を話したんだろう?
きっと人に話すような話じゃなかったんだろう。
あいつの涙は何だったんだろう?
その後も幾つか印象的な夢を見た。
傷つけたであろう人々が俺を追ってる夢だ。
夢の中の俺はどれもこれも
どうしょもなかった。
まるで何か変わったと思い込んでいる俺に
何も変わってねーよっと
教えてくれてようだった。
夢の心理学は分からない。
世界は全くベールに包まれていて
俺は世界を信じたいように信じていて
時折その乖離を知らしめる。
ある日、その日まで生きてきたことを受け入れた。
それすりゃも勝手な解釈で
世界の真実はまた別の世界のようだ。
繰り返すことすりゃも受け入れたつもりだ。
また、同じように間違えるであろうことを
夢が暗示したのか?
肝に銘じろってことだろう。
1月23日再びウアウトラデヒメネスへ出発した。
ヒョンな事からYさん、H君、俺の3人でウアウトラへ向かった。
メキシコシティーに来てから夜寝れない日が続いてた。
なんだかこの町と離れたかったし
また、忘れかけてたことを思い出したかったのだろうか?
土曜日、T君がメキシコシティーから日本に発つ夜、メスカルを飲みながら旅を語った。
朝4時半にゲストハウスを出るT君とYさんんと一緒に飲んだ。
俺はウアウトラでのことをみんなに話した。
酒を飲んでご機嫌でおしゃべりな俺が感じたこと経験したことを話している。
何かを伝えたっかたんだろう。
Yさんが「私も行ってみたいなー」っと云った。
俺は調子付いて酒のいきおいもあったのだろうか
「じゃー一緒に行ってみる?」
っと云った。
まっ、なるようになるさっ
そんなことを思った。
そいてT君を朝見送った。
その後Yさんと一緒に風呂屋に行き
湯船に浸かりながら話した。
何か話さなきゃいけないことは本当はあって
それなのにまだ俺はそれを話していない
そんな気がしてならなかった。
何ヶ月ぶりかの湯船に浸かり
外に出るともう10時を回っていた。
それは日曜日で商店街のシャッターが閉まり
街路樹から零れる日差しが綺麗だった。
後日、月曜日朝ウアウトラに出発することが決まった。
宿に帰りキッチンでコーヒーを入れてるとH君が話しかけてきた。
「明日オアハカ行くんですか?良かったら一緒に行きませんか?」
H君は前にもティオティワカンに行くのを誘ってくれた。
その時は朝起こしてくれたのに
「あーごめん、眠い…」っと
俺は再びベットに潜っていた。
連れない返事をする理由が見つからなかった。
かといってあんまりまだお互いのことを話したことないH君に
オアハカを経由してウワウトラに行くことを伝えるのも気分じゃなかった。
まーどうせっオアハカを通るんだ、そう思い。
「いいよっ、朝出るんだけど良い?じゃー朝飯食べてからね…」
そんな返事を返した。何かを話さなきゃ…。
徹夜明けの疲労からか頭が回らなく何かが億劫だ。
一緒に行くYさんにオアハカまでY君も一緒に行くムネを伝える。
昼間の何時だろうか?
浅い浅い眠りに付いた。
深夜起き出して、いつも夜中食べていたタコス屋へ出向く。
チキンスープのレバー入り、タコス5個、イチゴミルク500ml。
宿のドアをソウッと開けて皆を起こさないようにベットに潜り込む。安物のウールの毛布が肌に硬い。
朝7時ころ目覚ましで起きる。
宿の食堂でコーヒーとパンを取る。
なかなか起きて来ないH君を起こしに行く。
H君21歳飛び上がって起きる。
元気だ。
荷物を宿に預け、3人でタクシーに乗りバスターミナルへ向かった。
チケットを買う10時30分出発予定、まだ1時間弱時間があった。
俺はYさんがトイレに立った時、H君にYさんと俺はオアハカを経由してオアハカには泊まらず
その日にウアウトラに出発するつもりのムネを伝える。
「ウアウトラって何ですか?」
素朴な疑問だ。
H君の問いに出来るだけ慎重に言葉を選びながらウアウトラでの話をする。
「あー凄いっすね…」
俺は「ウン…」
と答える。
H君が言葉を待っているように感じた。
「まー自分の判断だけど、一緒に行く?」
H君は云った。
「まー流れっすかね…」
その後、H君の質問に出来るだけ答える。
何かを話さなきゃいけない…けど言葉が出てこない。
「どこでネタ買えるんですか?」
曖昧だけど俺はちゃんと教えてしまう。
頭の中に…を持ったまま
オアハカ行きのバスに乗り込んだ。
バスの振動に揺られ眠りに誘われる。
フト目を開ければ、アキラの「神の肉テオナナカトル」
を手にしながらウトウトするYさんが隣に座っている。
どこのページを開いているんだろう?
Yさんの開くページを少し覗き、俺はまた眠りに付いた。
俺最初、独りでウワウトラへ行った。
今再びウアウトラへ向かい、人を連れて行こうとしている。
俺はアキラの本を何度も読み返し、自分の判断で向かった。
彼らは曖昧なまま旅の流れに乗ってウアウトラへ向かっている。
そしてまた俺も、ホントに良いんだろうか?
相変わらずスペイン語も全然だ…
H君はメキシコに来てまだ一週間たらず、イネスとアポも取っていない、俺も飛行機までの時間がない、
ウアウトラとシティーの往復の時間を入れれば26日までシティーに到着するとするとなると24日だけだ。
それに俺自身にもどこかで迷いがあった。
イネスにアポを取らなかったのは、曖昧な気持ちを持っていたし、
もし会えなかったら会えなかったらで俺は何かの責任から開放されて楽だからだ。
イネスがオアハカに仕事に行っていたら、それはそれで安堵だなっ、そう思った。
旅の流れに身を委ね、今は眠ろう。
オアハカに着くまで。
午後3時か4時頃
何度目のオアハカバスターミナル到着だろう?
5度目位か…色んな町や村に行っては再びオアハカに帰って来た。
Yさんとも出会ったのはオアハカで別れて再び出会ったのもオアハカだった。
久しぶりのオアハカは雲行きが悪かった。
雨が降れば森の恵みキノコが生える。
この様子だと山間部のウアウトラは雨に包まれているだろう。
ウアウトラ行きの最終乗り合いバンは夜8時…。
Yさんと良く通ったメキシコにしては珍しいベジタリアンメニューのあるレストランと
カテドラル前のカフェに皆で行った。
レストランではH君も喜んでくれた。
「これで35ペソなら安いですね!」
俺は云う
「ここ位だよっ、ホントまともに野菜食べれるのは」
Yさんはこのレストランに俺がオアハカを発った後も良く通ってたらしい…。
シティーで再びYさんに出会った時、
「デザートもつくようになったんだよ!」
嬉しそうに話してた。
明日は儀式を受ける予定の俺たち。
しっかり食べれるレストランはありがたい。
儀式前最後の晩餐を終える。
7時も回った。
ウアウトラ行きのバン乗り場まで歩く。
「オアハカで出会った人たちにまた会えないかな…」
そんな話をYさんとしていた。
歩いているとやはり出会った。
俺にサルサをリードしてくれた女の子だ。
彼女の肩にはマッシュルームの墨が彫られている。
歩いていると彼女の墨が目に入った。
なるようになるかな?
そんなことを思い出会いと別れの抱擁をする。
夜8時乗り合いバン出発…。
懐かしい道を走る。
霧の中慎重にバンは山道を巡る。
深夜2時頃俺たちはウアウトラへ到着した。
冷たい雨と雲が街を包んでいた。
前回と一緒の5月1日ホテルに宿を取る。
交代で暑いシャワーを浴びる。
後はゆっくり休むだけ。
心の中の心配は尽きない…。
2つだけのベッドを3人で分け合う。
男の子のH君と俺で一緒のベッドに寝る。
H君に布団を取られて寒い夜を過ごす。
24日。
メルカドとホテルの前の道を葬式の行列が進む。
いつもは陽気な楽団も雨のためか
布で楽器を包んでいる。
静かな行列だ。
レストランでチョコラテを飲んだ後
イネスの家へ向かう。
尋ねるとイネスは不在だった。
「ママは午後2時頃帰ってる」
年頃の娘が教えてくれた。
まだ暫く時間はある。
Yさんがバスの時刻を見に行こう、と云った。
チケット売り場を探し
Yさんと俺は25日夜9時メキシコシティー行きのチケットを買う。
H君は25日昼1時30分オアハカ行きの乗り合いバンのチケットを買う。
俺たちは再び歩き出した。
さっきの葬式の行列が再び現れた。
俺はフト呟いた。
「あっイネスいるんじゃねー?」
葬式行列の後部に目をやりながら歩く。
「オラッイネス!」
同時に目が遇ったような気がした。
俺の名前はどうやらもう忘れてるらしい…。
俺もまたイネスの元を訪ねた一介の旅人に過ぎない。
30分後位にイネスの家に行くことになった。
流れ流れ…。
何処へ向かう流れか…。
Hくんがホットドック屋を指差し云う
「チョー喰いてー!」
俺はマッシュルームの体における変化を話す。
H君が云う
「あのーキノコ見たいんですけど…。どこかで見れないんですか?」
俺は云う。
「あそこ角を曲がって暫く歩いたら右手にキノコの絵が描いてあるトタンの家があって
オバちゃんが一杯持ってるよ…」
H君が云う。
「見に行きませんか?」
俺は云う。
「駄目だよ。いやっ俺は見たくないね、
サンホセデルパシフィコでなら良いけどウアウトラじゃ見たくないんだ…見るなら独りで行って…」
伝えたいことを伝えられてないもどかしさが募る。
H君は云った。
「あー、じゃーいいっす。」
儀式終了後の軽い食事を用意するため
バナナとリンゴとパンを買った。
待ち合わせの時間も近くなりイネスの家に向かった。
イネスと握手を交わし再び自己紹介をみんなでする。
儀式を受けたいムネを伝える。
了解を得て、夜6時再びイネスの家へ向かうことになった。
ホテルに戻る。
H君に云う。
「これ読んどいてよ、このオアハカあたりから…」
俺はアキラの「神の肉テオナナカトル」を渡した。
H君が云う。
「うわーこれ面白いっすねー、これ読んでからティオティワカンとか行ったらもっと良かったのになー」
待ち合わせまで後2時間位。
俺が読んで欲しかった部分は最後の後半だ、
H君の読んでいるティオティワカンの部分は一番最初の方だった。
読んで欲しい肝心の部分はまだまだ先。
儀式まで後2時間そこまでに彼は俺が読んで欲しい部分までたどり着けるのだろうか?
俺は、アキラの書いたマッシュルームの儀式の部分を読んでH君に最終的に判断して欲しかった。
皆が旅先に持ってきたCDをかけながら時を待つ。
H君はゆっくり読んでいる。
夕方5時半イネスの家へ向かう準備をする。
部屋を出る前にベッドの上に伏せてあるアキラの本のページを確認する。
俺は呟いた。
「まずいな…」
アキラの本を覗くと調度アキラが旅で会った仲間3人でウアウトラを目指す、と云う場面だった。
胸の中に不安が疼く。
21歳メキシコ一人旅…そして一週間目。
俺だって語学は全くだし、決して旅慣れてなんかいない。
H君同様勢いで進んできたようなものだ。
Yさんも1年南米を旅しているがそこまでスペイン語に慣れている訳じゃない。
少なくても何か共通の認識を抱いていたかった。
俺はイネスのところでの2度儀式に参加した。
一度目の感動とは裏腹に2度目は俺がイネスとの約束を破ったため、辛い思いをした。
胃を空にしとかなければならないのに、
俺は儀式の前に空腹に負けたのと少し小慣れた気持ちでいたからかタコスを食べてしまった。
儀式でマッシュルームを食べた後、意識の変化が悪かった。
胃にタコスが残っていたからだろうか?入っては戻り入っては戻り…
イネスとのタイミングも何だか合わない。
イネスの賛美歌も空しく響く。
約束を破った罪悪感からか…正直にタコスを食べてしまったことを言い出せない。
「もう大丈夫だよイネス…寝て良いよ」
っと云った。
そして独りで精神力勝負のキツイ体験をした。
そんな経験から決してイネスだって全てが見える万能の神ではない、
普通のオカーさんであり女性なのだ。
彼女はマサテクの伝統を体験から通じて一つ一つ学んで行った伝統医療技術者みたいなものだ。
決してシャーマンっと呼ばれるからと言って万能な訳ではない。患者が嘘ついたら、正しい医療を行えないのは西洋医学も同じだろう。
俺たち3人の共通認識と云えば、好奇心、なるようになるさっ、何かを体験してみたいっ。
そんな旅人誰もに通じるようなことだけだった。
2人を連れてきた責任感のようなものが伸し掛かる。
ホントに危険な魂に触れてしまう儀式だ。
もしものことが合ったら命がけでその人を守らなければならない。
自分の判断、彼らの判断、人は人…。
同じ旅人としての個々への無責任さ
人としての責任
彼らへの接し方に戸惑う。
儀式は孤独な戦いであり、それをクリアーした後の儀式だ。
ホテルから俺たちは雨の降りしきる街に出た。
先頭を歩きながらすでに儀式は始まってるように感じた。
夕方6時到着。
冷え切ったコンクリート剥き出しの一階の儀式用の部屋。
断熱のない床が体を芯から冷えさす。
イネスがホテルからブランケットを借りて来いと言う。
皆、別に大丈夫だと言う。
俺は云う。
「いやっホントこれからもっと冷え込んでチョー寒いんだ、ホテル行って俺ブランケット取って来るよ…」
3人で一度ホテルに戻りベットの毛布を剥ぎ取る。
ベットは2つ、一枚足りねーなー。
そんなことを思う。
そしてイネスの家へまた歩く。
7時頃儀式開始。
イネスが前回と同じように祭壇の前で唱え始める。
一人一人の名前を忘れないようにイネスは再び名前を聞き返し
慎重に名前のメモを取りそれを祭壇に置く。
渡された琥珀を一人一人握り締める。
それを再びイネスに渡す。
燃える墨の中へ琥珀を置く。
火が灯り白い煙が部屋を包む。
ミントのような爽やかな香りがあたりを囲む。
3枚のバナナの葉に今まで見たこともないほど大きなキノコが並べられる。
採りたてであろう瑞瑞しい。
独り独りに手渡され皆緊張している。
「食べるとどうなるの…?」
H君の素朴な疑問に上手に答えて上げられない。
H君自身も心配している。
どうなっちゃうんだろう、俺大丈夫かな…。
そんな気配を受け取る。
イネスに指示される、
H君は3つ、Yさんは4つ、俺は特に指示なし。
皆ゆっくり食べ始める。
美味しく無いだぁー醤油が欲しいだ…。
「どのくらいで入るんですか…?」
H君が俺に聞く。
「30分1時間…人によって違うけどその位が目安じゃないかな…。
最初見てるものに変化が現れるから自然と分かると思うよ。」
H君の心の不安を取って上げることは俺には出来ない。
本人の意思が一番重要な儀式だと思うのだが
迷い、不安、情報の欠如、最初の好奇心が薄れていく。
「自分に素直にね…キツイ時はキツイ、入ったら入った、ちゃんと伝えないと上手くいかないから…」
H君に話す。
「あっはい…」
返事が心もとなく感じる。
暫くしてYさんが
「あたし来たみたい…」
っと云う。
続いてH君も
「なんだこれー?」
と呟きだす。
俺も入りつつあったが集中出来ない。
俺たちが入ったことをイネスが確認する。
白い粉を体に数箇所にすり込んで行く。
「ふーっ」
若干の安心感に包まれる。
それぞれの世界へ入って行く。
イネスが歌を歌う。
H君が寒がり出す。
「スゲー寒いんですけど…」
毛布を集め体に掛けてあげる。
だいぶ冷え込んできた。
外からデカイ音で戦争映画のようなものが流れている。
「うわーなんだよこれーっ、頭やられんなー!」
H君が云う。
耳に障る。
俺は思う。まずいなーっ。
イネスも俺たちの様子を見て、その音にまずいなーっと云う顔をする。
イネスは俺に語りかける。
大丈夫…?イネスも心配そうだ。
俺は皆に呼びかける。
「寒いね…温まろうぜ!」
3人で壁にもたれ掛か毛布にくるまりくっ付き合う。
確かに頭がやられそうになる程の戦争映画の爆音が響く…
爆弾の音、機関銃の音、悲鳴。
いくら映画とはいえ、こっちはマッシュルームを食べて
凄い敏感になっている。
悲鳴は悲鳴にしか聞こえない…。
2人の真ん中に入り3人で体育座りをして二人の膝を強く抱く。
我慢の時、苦しい、イネスの賛美歌に集中しようとするが
恐怖に近い感情に襲われる。
「何なんだよこれー…。」
H君が呟く。
H君にもっと毛布を掛け抱きしめる。
俺は云う。
「あー大丈夫だよ、大丈夫…」
H君が呟く…。
「何でそんなに優しいんですか…」
H君の綺麗な目から涙が零れてる。
上手くは答えられない。
俺が寒がってるときにイネスがしてくれたように俺は
マネしてるだけだった。
絶対独りにしちゃいけない…魂を彷徨わせちゃいけない。
イネスが何か呟きながらH君の体を摩る。
俺は上着のセーターを脱いでTシャツ一枚だった。
H君が云う。
「震えているじゃないっすか…。ホントは寒いんでしょ…」
俺は答えられない。
イネスや僕らの間に緊張が走る。
俺は上着の暖かさが嫌だった。
自分の熱を上げたかった…。
そんな俺の様子すりゃH君を不安にさせているようだった。
相変わらず外から戦争映画の爆音がや悲鳴が鳴り響く。
マジでマズイっ…。
手を付くしかない、流されないようにひたすら意識を保つ。
どうしよう?どうしよう?
イネス大丈夫なのか?このままで…俺は思った。
いいタイミングで部屋にミゲルが遊びに来た。
クンフーのモノマネをしながら…。
部屋に安堵の空気が立ち込める。
俺はミゲルに飛び掛りプロレスゴッコを始める。
俺は日本語でミゲルに云う。
「おまえマジうるせーんだよ!あの音どうにかなんねーのかよ!こっちはキノコ食ってんだよ!
頭ヤラレルんだろーっ!」
っと云いながら俺は脇固めや足の四の字固めを繰り出す。
ミゲルは楽しそうに俺にパンチやキックを入れてくる。
マジで救われた…。
イネスも笑っている皆も笑っている。
「ふっー!」
本物のため息をつく。
戦争映画の音は鳴り止んだ。
意識が集中と拡散を繰り返す。
その度にイネスが唄を歌う。
幾度となく体にまるで結界を張るように粉を刷り込む。
息切れ、もう一越え。
睡眠不足と不摂生からかキツイ…。
H君から声が漏れる…。
「あっー!何なんだよっ、これよーっ」
イネスも真剣だ。
床に寝ろっとイネスも云うがH君の耳に届かない…
イネスは自分で寝る姿勢を取ったりジェスチャーを使ってH君に訴えてる。
H君は笑う…
「何やってんだよー…」
俺はH君を呼ぶ。
「おいっ!いいから寝ろよっ横になるんだよっ」
イネスと一緒に肩を抱き寝かしつける。
イネスが寝かしつけ唱えながら毛布を掛け体を摩る。
H君は
「くすっぐてーっよ!くすぐってー」
大きな声を出す。
「いいから大人しくしてろよっ!」
段々俺もイライラしてきた。
下の名前を呼び捨てで呼ぶ。
「おいっ!ちゃんと自分もてよ」
イネスに大丈夫だよっと云う。
イネスが外に出てくと娘を連れてきた。
毛布に包まる俺たちを
部屋の隅の椅子に座りながら見ている。
いやっ顔を横に背けている。
見てられないのだろうか…。
イネスが娘を呼んでH君の隣に座らす。
H君の手を握らせる。
そして二人で歌い始めた。
H君は安心し始め呼吸も穏やかになっていく。
暫くして手を握りながら
娘はH君に笑い掛けた。
「15ペソ…よ。」
落ち着いたH君は暫く横になっている。
そして突然起き上がり靴を履き始めた。
しっかり呼びかける。
「Hっ、ドコ行くんだっ?」
H君は吐き捨てる。
「分けわかんねーよっ!」
俺は云う。
「まー座んなよ…」
H君は毛布の上へへ垂れ込んだ。
バナナの葉の残りのキノコが辺りに散らばる。
Yさんが黙ってそれを片つける。
「H君…靴ながなきゃ…」
俺は笑いかけて靴を脱がす。
イネスと彼の肩を抱きながら背中を摩り続ける。
俺はH君の背中を摩っていると何故だか涙が溢れてきた。
こんなにも彷徨ってるんだ…。
大変だよな…。
生きるって命がけだよな…そんな事を思った。
落ち着いてきたH君と少し話す。
「見ろよ俺…全部分かるだろ、H君…」
H君は云った。
「はいっ全部分かります。」
俺はH君の腕を握る、
「これが俺の力なんだよ…」
俺は何かを伝えようとした。
H君が云った。
「はいっ分かります。」
俺は云った。
「お前も分かるだろ…自分の…」
H君は云った。
「はい…」
俺は云う
「じゃっマジで兄弟なるか?」
俺は手を差し出した。
硬い握手交わす。
「H-!」
っと云いながら顔を摩り肩をゆするっと
ウザそうに
「わかったっよ!」
っとH君が云った。
そしてYさんが云った。
「H君…よく独りでここまで来たよね…」
H君の目から涙が溢れた。
マリアのような優しさの一言だった。
俺も感極まり涙が零れた…。
イネスからも安堵の表情が溢れる。
肩の力が抜けた俺はイネスにもたれ掛かり肩を抱く。
イネスが
「ナオキー…」
っと優しく呼びかけてくれる。
「はーイネス…グラシアス…」
イネスが俺の背中を摩ってくれる。
全身の力が抜けた俺は
椅子に座った。
「ティエネ…シガロ?」
蝋燭だけの部屋でみんながタバコを探してくれた。
椅子にもたれ掛かりタバコに火を付け
一服する。
H君が俺に言う。
「直さんっ小さいっすねー!」
改めて云うんじゃねーと思う。
低学歴、低身長、低収入、3T。
「疲れてる時いうんじゃねーよ」
俺は思わず笑う。
H君が俺に聞く。
「これからどうなって行くんですか?」
俺は答える。
「だんだん下がってくからゆっくりね…最後まで自分でだよ…」
イネスが優しく唄う。
H君は寝息を立て始めた。
Yさんが云う。
「H君凄い暖かくて離れられないんだけど…どうする?」
俺は云う。
「じゃー今日はここで寝ようよ、イネスもそう云うし…」
寝静まった二人を見てイネスに伝える。
「イネス…眠くないの?」
「ナオキは?」
「大丈夫そこで今日寝るよ」
「分かったわ…」
「ブエノスノーチェス…」
「ブエノスノーチェス…」
入り口から出るときイネスが云う。
「バイバイ…」
俺も
「バイバイ」
と云って手を振った。
寝静まった二人を見て俺はパンを持って屋上へ行く。
お腹がペコペコで寝れなかった。
ウアウトラの雨に打たれながらパンを貪る
「ウメっー!」
儀式の途中トイレに行くとき
イネスの娘が手を握って連れってくれた。
可愛かったなー。
俺は眠りについた。
後日25日ホテルに戻る。
1時半オアハカに出発するH君を見送る…いろいろ話した。
「あれっ夢なんすかねー?」
俺は云う
「夢見たいだけど夢じゃねーよな」
H君は云う。
「ドラッグって良くないですね…」
俺は云う。
「ホドホドでしょ。」
H君は云う。
「葉っぱも吸いすぎると言葉がおかしくなるすよっ」
俺は云う。
「ホドホドだよな…。」
お互い何度もお別れを唄う。
手を振り分かれた。
イネスの家に戻るとイネスがアキラにメールを送りたいか
手伝ってっと云われ一緒にネット屋に行った。
俺のメールアドレスからだ。
内容は良く分からなかったがどうやら
アキラさんに祭壇をもっと良くしたいから…ちょっと寄付してして欲しいっと云うような内容だったっと思う。
ナカナカ調子の良いカーさんだ。
ちゃっかりしってる。
やはりアキラさんから返事は俺の元に返ってきていない。
イネスっ!
俺が思うにその辺日本人はシビアなんだよ。
俺も同じくだ!
イネスにチョコラテを入れてもらう。
雨に打たれ冷えた体に染み入る。
イネスの娘に笑顔で
「ミ.ノビオ」と何度か呼ばれた。
照れて笑って誤魔化していたら
帰りの握手の時、手を握り返してくれなかったし…。
何だか冷たかった…
えっもしかしてマジで?
いやここはメキシコ、たんなる誉め言葉だろう。
やはり俺も男らしく
「ミ.ノビア」っと云うべきだったか
時すでに遅し。
雨のメキシコシティーのネット屋からフト思う。
イネスの娘可愛いんだよなー
またいつか遊びに行こう。
娘に会いに!
明日27日バンコクに発つ
GNJにメールするのを忘れていた。
会えるだろうか?
ちょっと気になる!